株式会社PMC 外国人雇用ドットコム 

(株)PMCは厚生労働省・法務省に指定の外国人技能実習制度における養成講習機関です。

外国人労働者とのビジネスギャップ

第6回 メンタルヘルスケア

企業の人事担当者から、外国人労働者のメンタルヘルスについて寄せられる
相談件数が年々増えてきています。いずれのケースにおいても、彼らの
おかれた状況を理解してあげて、精神的不調が発生する前の「事前ケア」を
行うことが重要となってきます。

よくミスをする、やる気がない、心ここにあらず、注意力が散漫でいつ怪我をしても
おかしくない、一人で何でもやろうとして失敗する、最近言動が変わってきた、
うつむきがちで独り言が増えた、ヒステリック又は凶暴になった・・・等々、
様々な相談事例があります。


母国から日本に来た当初は、期待と不安が入り混じった興奮状態にあったとしても、
本人らにとって見るもの聞くもの全てが新鮮で、周囲の方々も歓迎ムードが
暫く続くこともあり、お互いに精神的な安定は保てるものです。
また「異文化」での生活は刺激的ですので、相互理解への協力体制が続く間は、
意外と精神的不安定状態には陥らないのが一般的です。

そんな満足感や新鮮さも月日が経つにつれ変化してきます。遠い異国の地では
ホームシックにもなり、理想とは異なる現実で多忙な仕事をしていくと、
後輩・同僚や上司との間でのちょっとした思い違いや、日本語の難しさという
要因もあって、自分の知らないところで恣意的な事が行われているのではないか
という勘違いストレス等につながり、それが徐々に増幅したり、生活面においても
「食生活」の違いという大きなストレスが加担し、「気にかけてくれていない」
ことを「知らぬ間に」自分自身で思い悩みはじめると、心身ともに滅入ってくる
ようになるケースが多いようです。
過度な長時間労働が心身に与える悪影響は言うまでもないですが、日本に
来た以上は人の倍以上頑張るという方が多く、母国に残した家族のことを思うと
一層頑張ってしまう方の割合が非常に高いのも原因となっているのでしょうか。

これまでの母国での経験で身に付けたストレス対処法でうまく解消できない日々が続き、
自分の心的改善効果がないと知らぬ間にさらに焦燥感にかられ、結果的に頻繁に
未達成感を感じるようになり、虚脱感や吐き気・めまい・食欲不振・不眠などの
症状が出てきて、それがひどくなってくると、相談する相手がいても、アドバイスを
聞いても、自分の力だけではどうしようもない状態になってくるのでしょう。


あれっ少し顔色が悪いとか、声が小さくなった、団体行動を避けるようになった、
落ち着きがなくなった、ミスが増えてきた、体調不良で休みがち等の前兆、
つまり「今までと何か違う・いつもとなにかが違う」というサインに気付いたときは、
やたらと励ますのではなく、なるべく同じ目線にたって話を聞いてあげ、問題を
一緒に解決する姿勢を見せ、上長・上司とも相談して組織として対応にあたることが、
初動で必要なことではないかと考えます。

誰もが自身の心の強さで解決できるという過信はしないように、対応する側も、
あくまで世間一般の大人であれば有している、相手の立場に立った「常識」から考えて
接していくことが、周りにいる人ができる「事前ケア」と言えるのかもしれません。

第5回 清掃のルール

先日、中国籍の外国人労働者の方々と、寮を「きれい」にするルール作りを
話し合うため、3日ぶりに彼らの寮を再訪したときの話です。

そもそも中国では、学生時代から寮で相部屋にて生活する経験をしている人が多く、
一人っ子が増えているものの、いわゆる共同生活への抵抗感自体は少ないです。
また地方都市では、電車や家の窓からごみのポイ捨てが多く公共マナーが問題と
なっている一方で、自分の部屋はきれいにする傾向が強いのですが、訪問した寮は
さすがは男部屋、私自身の学生時代が懐かしくなるような散らかりようで、
「きれい」にする甲斐のある部屋でした。

「今で十分きれいです」という彼らの意見へ反論するために、入口ドア下に
タバコ吸殻が3日前から落ちていることを指摘すると、すぐに拾いゴミ箱に捨てて
いましたが、誰も気にならなかったの?という疑問がわき、私が期待している
「きれい」というイメージを伝えるためにも、「友人や知人が来たときに、
招かれた人も招いた人も、きれいだと嬉しいでしょ?来た人が驚くぐらいきれいに
掃除しよう」と彼らに話し私自身も掃除を始めてみると、彼らも続いて各所の
清掃をしながら清掃責任者を決めていきました。

他に気になる清掃箇所があるか聞くと、自転車置き場もきれいにしたいということで、
一緒に行くとすぐさま数列に並べはじめましたが、そこの寮生の人数は多く、
「皆自転車を所持しているのだから置く場所を決めないと、帰ってきた順に
家に近い方、近い方へと停めるだろうから、これじゃ長続きしないね?」に対して、
「確かにそうです」と先輩・後輩別や男女別がいいとかいろいろと相談し合って、
それなりの方法で駐輪ルールを作ることになりました。

例えば「この部屋をきれいにします」「自転車置き場のルールを作ります」という
話を具体的にどこをどうするのか、一緒になって行動してみないと「きれい」
というイメージの差が大きいため、なかなか到達点がはっきりしないものです。
一般的にきれい、というのがどこまでのレベルを指すものなのか、これまでの
経験からくるイメージがお互いの頭の中に存在するため、このぐらい、という
「程度の問題」は実際にその程度を見せて、こうする、ということに対しては、
どうやって継続させるのか、という教え方や示し方が一番大事だと、こういった
現地視察の度に感じます。

彼らと作成した寮規程の一部となる清掃ルールを各責任者が予定通り実行し、
確認・指導を行ってくれるか多少の心配はありますが、来客があったときに、
「意外ときれいですね」と彼らに褒め言葉がかけられる日があることを信じて、
しばらく気に留めて見守り続けてみようと思います。

第4回 ベトナム国の労働者への教育

先日、ベトナム人の社長と話をする機会がありました。

彼の仕事は、国外で就労したいベトナム人技術者と、優秀な技術者を採用したい
諸外国企業とをマッチングする仕事を行っており、挨拶もそこそこで話し始めると、
ご自分の名刺入れを座布団にして私の名刺を上に置いてから話し始め、聞くと
まだ30代前半の若く礼儀正しい社長でした。

訪日目的を聞くと、「日本も不景気だからラッキーです。日本企業の社長と
ゆっくり話ができる」と約1カ月かけて様々な企業に営業しているとのことでした。


ベトナム国は、日系企業をはじめ様々な国から企業が進出し、先日の日経新聞にも
記事が掲載されていましたが、ハイウェイだけでなく新幹線も南北に敷設する計画も
出来あがって、さぞかし賑やかかと思いましたら、就労人口の8割が農業に就き、
平均年収も$1,000強で、ワーカーが年8万人も海外へ出国し外貨を稼いでいるのが
現状とのことでした。
一方で大卒者はというと、工業団地にある大手企業に就職し、賃金については
満足しているものの、同団地は都市部から離れた郊外にあるため、毎朝6時に
家を出て、残業をしようものなら毎晩夜遅くに帰宅することになり、それが嫌で
退職するという定着率低下への対策に各企業とも頭を悩ませているようです。
 
他にも経済事情の話を聞かせていただき、暫くして、以前は何をされていたのかが
気になって聞くと、もともとは、ビジネスマナーや日本語等語学教育を行っていた
とのことで、少し意地悪な質問をしてみたのですが、若年層に対して万引きなどの
犯罪についての教育はどうしているのか聞いてみると、社長は本で色々なことを
教えても、何時間も、あれはダメこれもダメだといくら長時間話しても身にならない
ので、私ならこう教えますと前提した上で次のように語り始めました。

「いいですか、日本は今不景気ですから、企業努力を行い、人を減らし少ない人数
でも売上があがる体制を整えて、そして優秀な人材を欲しがっています。
だから日本に行くためには、一生懸命勉強しなければならない。
もし夢がかなって日本で生活することになったとしましょう。たまたま所持金が
少なくスーパーに買い物に行ったとします。日本のスーパー等は経営のため人を
減らしていますね。そして夜も売上を伸ばそうと営業しています。そのときあなたの
周りには当然店員さんも警備の人もいません。人を減らしているからです。
つい出来心でガムを盗んでしまったとしましょう。誰にもつかまらないで家に帰る
ことができたとします。これをいいことに、2回目、もう少し高価なものを盗んだと
します。いいですか、日本は防犯対策が完璧な国です。実はあそこにも、そこにも
防犯カメラが何十台もあって、実はガムを盗んだときもあなたはカメラに録画されて
いて、今回は私服警備の人も尾行し物陰から監視し、あなたがお金を払わず外へ
出た瞬間、あなたの両側に人が立ってあなたを捕まえますよ。」
とリアリティある話で教育します、と要は現実を想像させよう、伝えようと努力する
とのことでした。


例え話は万引きと極端でしたが、こんな教え方をする熱心な社長がいて、日本でも
さらに「上手に」教えることが出来たら、相乗効果が生まれてよりよい教育が
出来るのかもしれないと考えさせられるのと同時に、楽しいひと時を過ごすことが
出来た1時間でした。

第3回 外国人留学生

早くもこのシリーズが第3回となりましたが、今回は外国人留学生に焦点をあてます。


2年ほど前、政府の教育再生会議にて2025年には受入れ留学生数を100万人にするという
「留学生100万人計画」を策定したり、昨年には文部科学省や関係省庁が中心となって
2020年を目途に「留学生30万人計画」を策定したりと、留学生受入れ人数についての
計画論をよく耳にします。

 
国内の外国人留学生数は昨年においては約12万人であり、アメリカに比べると日本は
その半数以下の受入れ人数となっているものの、1999年には5~6万人であった留学生数も、
たった4年程で倍の人数となる10万人を突破しました。
当時の景気や大学間交流の時流が拍車をかけたのかもしれませんし、その出身国の
内訳をみると約60%を占める中国のおかげとも言えるかもしれません。


この計画に沿って物事が進んでいくと、これからはよりいっそう言葉の問題や留学生の
就労に関する問題が浮上し、真正面から対応する事項が多々出てくるかもしれません。

気になる言葉の問題ですが、国際語として使用されている英語をはじめ、ビジネスでも
使用頻度が高くなっている中国語・韓国語等、様々な言語に堪能な日本人が増えることにより、
コミュニケーションがさらに円滑に進み、より日本を理解してくれる人が増えるでしょう。

ここで重要なことは、いかに日本側が工夫して留学生達の日本語教育を充実させるか?
という考え方かもしれません。自国と異なる言葉を理解することは、相手国を理解し
そこで生活するために必要な考え方や文化を理解することにつながると思います。


また就労面を考えると、現在の法律では留学生は原則就労できないことになっていて、
採用の際は、本人に対して資格外活動の許可を受けているか念のため確認することが
必要となります。在留資格が「留学」となっているため、就労そのものが資格外活動
とされるからです。

そして他にも労働時間の問題があります。バリバリ働いてもらいたいところですが、
学業が疎かにならないよう在留資格が「留学」の場合、1週間につき28時間以内という
ルールがあり意外と確認を忘れがちなのでご注意いただきたいと思います。
また労働保険・社会保険の適用についての誤解も多く、税金についても特定の相手国に
なりますが2国間の租税条約に基づいた届出によって所得税が免除されるケースが
あったりと、留学生の就労は確認するべき点が意外と多くあります。


昨年秋頃ですが、海外からの中国人留学生達の帰国熱が高まっているとのニュースが
報じられました。このようなニュースを見たり、政府の○○万人計画等を耳にすると、
日本に行きたいという動機付けのために何ができるか、そして日本に来たら
より日本を理解してもらうために何をしてあげて、そのとき法律と現実のギャップを
どうやって縮めていくかが、国際交流や国際貢献の真の難しさと言えるのかもしれません。

第2回 ホウレンソウ

日本のビジネスシーンで重要視される「ホウレンソウ」。

仕事をするうえで重要ですか?
不要ですか?

という意識調査結果を残念ながら見たことがないのですが、
おそらく大多数の方が重要です、と答えるのではないでしょうか。
なかにはこれができなければ一人前とは言えない、とおっしゃる方も多いことでしょう。


以前ある報道番組で見たのですが、
外国人の方にとってはこの報連相に違和感を感じることがあるようです。
それはビジネスというものは、成果を出す行為自体に時間をかけるべきであって、
逐一上司へ進捗を報告する時間や行為、連絡事項を流すことに時間をかけるべきではない、
また自分に与えられた権限がないと仕事へのやりがいを感じない、
失敗しても成功しても細かい指示に従ったため責任の所在や達成感が薄れるので、
いちいち報連相ばかりしているのはおかしい、
というのがインタビューを受けた外国人ビジネスマンの意見でした。

これは外国人の方に限らず、成果のみを重んじる日本人の方にも意外と多い意見であって、
極端な話ですが職務分掌が厳格に明確で、かつ完全成果主義方針をとる企業では職務遂行の
状態について日々明らかになり、できなければ自分で身を引くもしくは解雇という
究極の選択となり、現実問題として評価への不満やできない言い訳が原因で、見えない
水面下の労使トラブルが増加する傾向が強く出てきます。


実際のところ経営者の考えを全社員が完璧に理解し行動するとき、以心伝心、文書も会話も
なくともお互いの考えが通じれば全てうまくいくのでしょうが、社内外において報連相なく
これを完璧に実践するのは至難の業と思います。

お金を払う者といただく者の関係でも、比較的長期の業務であれば受託者側はクライアント
に対して途中経過を報告する義務があって、逆にクライアントは状況を聞く権利があります。
同様に不明点が生じた際は連絡するでしょうし、万が一業務遂行時に突発事項が生じた
場合は、社内外で報連相をフルに使いこなし、解決策を探すことでしょう。


「報連相」はその度合いや程度、環境や立場によって賛否両論の比率は変わってくるでしょうが、
重要なことは、報連相の行為そのものにあるのではなく、クライアントを不安にさせず良い
仕事をすること、社内でビジネスの失敗要因を取り除くこと、目指した業務の方向性から
外れていないか確認することを目的として、そのツールとしての「ホウレンソウ」という
位置づけ自体が間違っていないかを、日本人も外国人もともに重要視することにあるのかも
しれません。
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